S会相談より 「社会保険に加入した場合、国民年金などの手続きは必要ですか?」

4月中に寄せられた「S会」会員様からのご質問で多かったのがこちらでした。

入社したスタッフの社会保険の手続き以外に、今まで加入していた保険の手続きは何か必要ですか?

 

総務・人事の担当者が入社した方からよく尋ねられることでもあります。

 

国民年金に加入していた方の手続き

 

国民年金・国民健康保険に加入していた場合、

ご本人の住所地の市役所で国民健康保険の脱退手続を行ってください。

尚、国民年金の脱退手続きは不要です。

 

【手続きに必要なもの】

①加入した社会保険の保険証(扶養の家族の分も)

②国民健康保険の保険証(返却します)

③本人確認書類(運転免許証など)

 

※①は、時期によっては数週間かかることもありますので、会社が加入手続き中であることを証明する「資格証明書」などを交付して差し上げましょう。

 

※手続きはその市役所によって異なることがある点にも注意です。基本事項としてお知らせし、まずは市役所へご連絡していただいてください。

 

誰がやる手続きか?

 

国民健康保険の脱退手続きは「ご本人」が行うものです。

社会保険(厚生年金・健康保険)の手続きは会社で、

国民健康保険の手続きは本人が行います。

 

だからこそ、会社では案内しないために質問が多いわけですね。

 

いい会社であること

 

入社手続きのご案内はわかりやすくできていますか?

必要な書類をいつまでに、誰に提出するのか。できれば書面で案内したいですね。

 

入社の際は、これから活躍するためにモチベーション最大であると同時に、そのモチベーションは常より脆いものでもあります。会社のちょっとした対応に心をとがらせて、些細なことでもササクレとして残っていきます。

ほんの少し丁寧にご案内するだけで、会社の信頼度、会社への忠誠度が大きく変わることもありますよ。

是非、会社が担当する以外の部分での不安要素が解消される「案内」をしていってください。

 

*資格証明書の交付、脱退手続き、その他入社時のご対応について*

お問い合わせはこちらまで! → info@srsakura.com

 

 

 

 

 

社労士って「労使」どちらの味方なのか

労(労働者)使(使用者)

となりの柿の木が隣家の敷地に枝を伸ばしている場合柿の実の権利はどちらのものか?

といった法律知識って知るとおもしろいですよね。

先日、資格予備校で労使紛争の「社労士バトル」なるイベントを行いました。

最高裁の判例をもとに、こういったトラブルの場合「労働者」と「使用者」で勝つのはどちらか?

というテーマで労働者側についた社労士と企業側についた社労士がバトルを展開するというもの。

社労士を志すものであれば一度は考えるテーマです。

社労士として企業側につくか。労働者側につくか。

はたして正解はあるのでしょうか?

 

何故、対立することが前提?

何においてもトラブルはつきものです。

感情というものがある限り、小指の先ほどの小さなトラブルが裁判に至ることはままあることでしょう。

それを前提にすれば、誰のためにトラブルを解決するのかによってどちら側という発想は生まれますが、そもそも労働者と会社(使用者)ってそんなに対立関係にあるものではないと考えます。

 

先日ブログで労働時間について書きました。会社側の労務管理の方法の紹介だったので、あえて言うなら私は会社側の社労士です。いかに法律に違反することなく、労働者にたくさん働いてもらい、なおかつ残業代を削減しようと言っているわけですから。

でもですね、

労働者をたくさん働かせよー!

残業代をごまかそー!

なんてことをお伝えしたいのではないのです。

だって少なくとも私が関与しているお客様(会社)はそんなことを求めていないから。

例えば長時間勤務について、何故相談があるかというとスタート地点はスタッフ側の希望であることが多いのです。

こういう希望が出ているんだけど、それが「あり」なのか「なし」なのか。

その判断をするためにわざわざ社労士にお金を払っているのですよ。

それを思う時、労働者側、会社側といったさも対立前提である視点がむなしく思われます。

 

社長のひとこと

かつて私もサラリーマンでしたので、新規部署の立ち上げを任され、それこそ寝食を忘れ仕事に没頭した時期がありました。

そんな私にある時社長がこう言いました。

「いつも遅くまでただ黙って仕事してくれるあなたを誇りに思っています。ありがとう」

 

この言葉を皆さんはどう受け止めますか?

 

私は当時、雇われる者としてとてもうれしかったです。

自分に与えられた責任を果たそうと必死に取り組んでいた自分を、社長はちゃんと見ていてくれた!ということが。

社労士となった今もこの時の感覚は大切に思っています。

会社が従業員をちゃんと見ていること。

これってつまり労務管理ですよね?労働基準法的に言えば。

法律で語れば、従業員の労働時間を管理することは使用者の義務である。

ですが、もっと愛ある考え方をすれば従業員ひとりひとりがどのように頑張っているのかにいつも目を向けている。

ということです。

労働時間(残業代)のトラブルはもしかしたらこの「目」が足りない時に起きるのかもしれませんね。

 

社長の気持ちの見える化

社労士としてもうひとつ言うのなら、遅くまで働くことを評価していたとしたら少し残念に思います。

日本では特に、私生活を犠牲にして何かすることを美しく捉える傾向があります。

畳の上では死ねない。親の死に目に会えない。

など、そのくらい働いていることがかっこいいという風習が今なお残っているように思います。

でも時代は変わりました。

残業しなければならない効率の悪い仕事の仕方を改善することに経営者の方々はもっと目を向けてほしいです。

「残業代を削減するテクニックを教えてほしい」

もちろんテクニックは色々ありますが、そもそも残業がなければ余計な費用はかからないので目を向ける先を変えれば解決していきますよ。

過酷な労働をしなければ評価されない会社ではヒトの問題がいつまでたっても解決されません。

 

前述の社長は過酷な労働を強いる人ではありません。仕事の結果でどんどんお給料を上げてくださる従業員をよく見ている社長でした。

ただ、仕事の結果で評価するにしても、たくさん時間をかけた結果と少ない時間で出した結果の評価に違いを見せないと、従業員側が勝手に「頑張らねば」と残業の日々を作り出してしまうかもしれません。

そうでないなら、短い時間で効率良く結果を出す仕組みを従業員側がどんどん自分から見つけていくようになるでしょう。

社長の心持ですよね。

効率も法律も、その会社において機能させるには社長がどのような考えをもっているのかが「見える」ことが大切なのだと思います。

 

で、どっち?

会社側なのか労働者側なのか

お金をもらう先ではなく、社労士の職責で考えるなら

労働者→会社

だと思います。

働く環境をよりよくしたいと思う気持ちがなければ会社に対して何のアドバイスも思いつかなくなります。

その結果として会社に売上・利益の動きにつなげていくことが私の社労士としての「おしごと」です。

 

法律というものを紹介するひとでも、どっちかの味方になって相手を攻撃する人でもありません。

トラブルがあるから敵だ味方だという考えになるのだから、社労士はその考えを失くしていく人でなければならないと思っています。

 

 

 

 

小さな会社の労働時間 『あまり使われていない44時間特例』

相談会で美容業と歯医者さんの正しいお給料計算のための管理チェックをさせていただきました。

月の就業日数や全体の労働時間は法定内であるにも関わらず「残業代」を支給しなければならなくなっています。

シフトの組み方をもっと工夫できますね。

労働時間の管理のご参考に、今日は特例のご紹介です。

 

44時間特例とは

スタッフ数が10人未満の会社様へ。

特例措置をお使いになっていらっしゃいますか?

44時間特例とは労働基準法に定める「法定労働時間」の特例措置です。

小規模の一定の業種に限り、

「44時間まで働かせてもいいですよ。」

これが特例措置の内容です。

「ウチは月給制だから、労働時間が何時間か数えていないよ。」

こう思われたとしたら大変です。。。。

労働時間の管理は法律上の義務です。また一定以上働かせる場合は協定を締結したり、時間外手当支払わなければなりません。

そのためにも会社の労働時間(所定労働時間)をきちんと決めて、管理していくことが必要です。

 

法定労働時間のおさらい

労働基準法では会社がスタッフを使用する時間を厳格に定めています。

  • 1日  : 8時間まで
  • 1週間 : 40時間まで

これを超えて働かせてはならないのが法律上のルールです。

社の実情で、もし超えざるを得ない場合は

36協定を締結し労働基準監督署へ届出を行った上で、超えた時間に対する割増賃金を支払わなければなりません。

いわゆる「残業代」です。

 

つまり労働基準法は原則で考えれば「残業」を許していないのです。

 

このお話をすると特に創業まもない会社様やサービス業など営業時間が長い会社様からいただく声がこの2つ。

  • スタッフ数に限りがあるから法律通りにシフトを組むのが難しい。
  • 残業代まで捻出するのはつらい。

こういう時のために特例措置があるのです!

 

 対象となる事業所

しかしすべての会社が導入できるわけではなく、この特例は下記のように適用範囲が定められています

従業員数が常時10人未満

商業

・映画・演劇業

・保健衛生業

・接客娯楽業

「商業」とはかなりざっくりしていますが、小売業、理美容業、不動産業などがそれにあたります。

飲食店は「接客娯楽業」ですから、パートアルバイトのシフト調整におおいに活用できます。

特例を用いた場合のメリット

特例を用いると週の法定労働時間がかわります。

・1日:8時間

・1週:44

本来であれば1週40時間を超えると割増賃金が発生しますが、特例では44時間まで支払いの必要がないということです。たかが4時間、されど4時間です。金額のメリットは少なくとも半日多く出勤させることができると考えれば忙しい会社であるほど導入メリットは高まります。

【ex.】

月曜日  8時間

火曜日  8時間

水曜日  8時間

木曜日  8時間

金曜日  8時間

土曜日  4時間  ←ここ!!

本来なら1日8時間の場合は週5日しか出勤させることはできませんが、半日出勤可能となります。

もし、平均的に出勤させたいならば、1日7時間20分となります。

 

ただし、あくまでも1日の法定労働時間は8時間ですので、1日の労働時間を長くしてしまうと割増賃金が発生するので注意してください。

 

1か月単位の変形労働時間制

「ウチは日数よりむしろ1日の時間が長い方がいい」

という会社もあるでしょう。

月末だけ忙しいとか、特定の曜日だけ忙しいなど、日によって働く時間を調整されたい場合は変形労働時間制を検討されることもお勧めです。

繁閑の差がある会社では導入することによって残業代をセーブすることができるなどメリットも大きいかわりに、必要な手続きがあり、それだけ管理も必要になりますからじっくり考えてから導入しましょう。

 

最後に

特例を用いたい場合、特に手続きはありません。

対象業種であるならばどんどん採用してほしいと思いますが、すでに40時間で労働時間を管理されている会社の場合、労働時間が増えることになりますので、導入に際し慎重なプロセスが必要になります。

労働時間の特例に限らず、会社のヒトに対するルールは創業時からしっかり考えておきたいものです。

雇ってからでは遅いという事態にならないように、まだ人を採用する予定のない会社であっても、労務管理のシミュレーションをしておきたいですね。

オフィスサクラでは残業代セーブのお手伝いや、創業支援を行っています。お気軽にお問い合わせください。